試合の舞台を街区に移した大洗女子学園側は、残存3輌がそれぞれの単独行動に移ります。追撃してくる聖グロリアーナ女学院の戦力は無傷のままですから、3対5の劣勢になっていましたが、市街戦での駆け引き如何によっては、戦力差を縮められるかもしれません。
西住みほは、その可能性にかけたのでしょう。
事実、西住みほが初めて立案し指揮を執った「もっとこそこそ作戦」は、隠れて相手の死角を近距離から狙い撃ちする戦法が主体となりました。初戦かつ練度の低いチームとしては、これしか選択肢が無かったのでしょう。相手に対して有利な点は、磯辺典子が言ったセリフ「大洗は庭です」にて示される通り、地の利を生かす事だけだったからです。それが街区でのゲリラ的行動であったわけです。
この戦法は成功しました。上図のようにカバさんチームが路地での待ち伏せでマチルダ1輌に近接砲撃をしかけて撃破しました。Ⅲ号突撃砲の本来の使用法とはこういうものだ、という説得力ある印象的なシーンでした。
それで、この戦法でさらに次の戦果を狙うのだろう、と期待しましたが、カバさんチームの動きはそこまででした。
御覧のように、目立ちすぎる派手な車体カラーが街区の陰に隠れていたとしても、さらに目立つ幟が4本もひるがえっていては、折角の隠蔽効果も台無しです。木塀越しの反撃を受けて撃破されてしまいました。
カバさんチームの4人は歴史に詳しい故に、過去の戦争における失敗についても何らかの知識があるはずだろうと思うのですが、自身たちの失敗にはなかなか気付かなかったのでしょう。それ以前に戦車戦の何たるかも理解していなかったようです。
第一、目立つ幟を4本も付けている点に関して、隊長の西住みほが何らのアドバイスもしていないのかな、と不思議に思ったものでした。
ほぼ同時期に、立体駐車場にてアヒルさんチームが、別のマチルダに対する背後からの近接射撃に成功しました。この戦法自体は間違いでは無かったのですが、マチルダのダメージは背後のタンクのみにとどまったために白旗が上がらず、、砲塔を旋回させての反撃が可能でした。
アヒルさんチームのほうは立体駐車場のゴンドラ内に入っていたため、身動きが取れませんでした。前をマチルダに塞がれて退却もままならず、返り討ちにあってしまいました。目の付け所は良かったのですが、いざという場合への対処を怠ってしまった典型例でした。
戦車戦に限らず、飛行機でも軍艦でも、どんな状況においても次の行動に移れる余地を持っておく、つまりは離脱可能な状況を確保しておくのが戦時の心得だということですが、大洗女子学園側にはそんな余裕も無かったのでしょう。
ともあれ、市街戦での劣勢挽回を目論んだ「もっとこそこそ作戦」は崩壊し、更に2輌を戦列外に失いました。観ていて、これが素人の寄せ集めのチームの実情であり限界なのだな、と思いました。やはりこうなるのだなあ、と、それまで手に握っていた汗が冷えてゆくのを感じたことでした。
これで、秋山優花里の言葉を借りれば、街区に残るはあんこうチームだけになったわけですが、車長は戦車道家元の西住みほが務めていますから、このⅣ号戦車だけはたぶん戦い抜くのだろうな、と感じました。
しかし、どのように戦い続けるのかは全く分かりませんでしたから、依然としてモニター前に膝を進めて息をのんで見つめる姿勢には変わりがありませんでした。
ですが、この時点での戦力差は1対4でした。どうするんだ、位置を掴まれて包囲されたら話にならないぞ、と考えました。果たしてその通りになってしまい、上図のように相手に捕捉されて追撃を受けることになりました。
ですが、その追撃を一度は振り切ります。聖グロリアーナ女学院側の1輌がカーブを曲がりきれずに肴屋本店の店先に突っ込む、あの有名なシーンが登場します。うわ、建物を破壊しやがった、補償とかどうするんだ、と思ったのもつかの間、店主らしきオッサンが怒るどころか大喜びの場面になり、唖然としたものでした。
どうやら、このアニメの世界観や意識は、我々の現実世界とはちょっと異なるらしい、とこの時点で初めて気付きました。戦車に突っ込まれて建物が破損しても、砲撃の流れ弾で建物が破壊されても、手厚い補償が確約されているからむしろラッキー、というのでしたから、思わず笑ってしまいました。
このアニメ、思ったよりも破天荒なギャグとか入ってるんだなあ、と感心しました。第1話ラストの空母のシーンにもびっくりさせられましたし。
しかし、次の場面にてあんこうチームもピンチに立たされます。聖グロリアーナ女学院側の4輌が揃って追撃してきて、道路工事箇所の通行止め位置にて、1対4にて対峙することになります。
ですが、追い詰められたⅣ号戦車の前に、いきなりカメさんチームの38t戦車が飛び出したのには驚きました。履帯が外れただけだったというのにも驚きましたが、絶体絶命のピンチに思わぬ展開をしかけるあたりに、このアニメもさすがだ、と感心しました。しかし、その砲撃が至近距離で思いっきり外れたのには面喰らいました。
バカでも当てられる近さなのに、照準も合わせていなかったようなのでした。小山柚子の「ここで外す・・・?」のセリフに笑いかけましたが、次の瞬間に河嶋桃のポンコツさを悟りました。生徒会広報の有能な事務役は、必ずしも有能な戦車道メンバーであるとは限らないのでした。
案の定、返り討ちをくらって38t戦車も撃破されました。これで本当にあんこうチームだけになりました。マジで詰んだのか?どうするんだ、と緊張もピークに達し、一瞬、このアニメの物語の流れが読めなくなりました。 (続く)