梅原屋さんの展示ガルパンプラモデルおよびジオラマは、多彩かつ豊富な内容を呈して見る者を心行くまで楽しませてくれます。Nさん独自のガルパン世界への解釈、そして更なる設定とストーリーを自在に展開して新たな境地へと向かった結果が、これらの展示品群と言えましょう。
左はカバさんチームのⅢ号突撃砲F型、右手前はレオポンさんチームのポルシェティーガー、右奥は・・・はて?Ⅳ号戦車に見えますが・・・?ちょっと違うような・・・・。
カバさんチームのⅢ号突撃砲F型は、配色は劇中車通りに仕上げてありますが、Nさん得意のツルピカメタリック塗装が炸裂しています。赤と黄色の部分にはキャンディペイント、白と青の部分にはパールペイントを施してあるそうです。こういう塗装法ですと、金属製品にも見えて重量感が加味される、ということを教わりました。
ですが、ポルシェティーガーのほうは、定番の改修をほどこしたのみであるそうです。Nさんにしては珍しくあっさりと終わっています。
上図は、Nさんによれば「サンダースとツーリング」という名のジオラマであるそうです。展示ケース内ではスペースの関係で上下の棚に分かれてしまっていますが、本来はサンダースチームの三台の車と大洗チームのサイドカーから構成される作品です。
まず、左手前に大洗チームのサイドカー陸王がありますが、元キットは模型誌アーマーモデリング2009年1月号の付録であったピットロード製品で、帝国陸軍仕様であるのを大洗女子学園仕様に変えてあります。乗っている西住みほと秋山優花里は、元々はテッケンクラートに付属していたフィギュアです。見事な転用例と言えましょう。
次に、右手前のJeep Rodは、アリサの車です。タミヤのウィリスジープのキットをホットロッドに改造したものですが、Nさんの独特の改造テクニックが織り込まれています。低車高化をはかり、インチアップも施してフロントタイヤにおいてはハイラックス用ホイール、リアタイヤにおいてはハンヴィー用ホイールに交換してあります。そしてエンジンはシリンダーを複製してV8エンジンに変更、シートはバケットタイプに換装したうえ、ホットロッド化で外した燃料タンクを後部に移設し、リアスポイラーまで新設するという凝りようです。
そしてこちらのトラックはケイの車である、という設定ですが、見る人が見れば、元キットはモンモデルの1/24スケールのフォードF350であると分かります。しかし、Nさんのエネルギッシュな改造工作の数々によって、元キットの状態からは大きくかけ離れてしまっています。
まず低車高化、インチアップは定番です。ミニ四駆用のタイヤおよびホイールに換装されているため、1/24スケールの雰囲気が弱まって1/35スケールのケイとの違和感が薄められています。そしてフロント、サイド、リアにエアロバーツ、ブリスターフェンダーをエポキシ造形によって追加し、荷台にはキャリアを自作してあります。ここまで作り込むのか、と驚きましたが、さらに荷台のバイクも凄い作り込みがなされています。
バイクの元キットはミニアートの米陸軍憲兵のバイク、ハーレーダビットソンWLAですが、ローライダーに変えてあります。フロントフォークの角度を変更して伸長し、タンクおよびシートはエポキシ造形で表現、マフラーも大径化するなど、随所に変更が加えられて元の軍用ハーレーの雰囲気がどこかへいってしまっています。完全にNさんのガルパン世界観のイメージに作り変えられているあたり、驚嘆に値します。レオナルド・ダピンチも真っ青の芸術的作品です。
続いては、ナオミの車であるハンヴィーカスタムです。ルーフをバノラマルーフに変えて内装が見えるようにしてありますが、元キットがタミヤのハンヴィーであると悟った方は、すぐに車体サイズに違和感を覚えることでしょう。ドアを境に切断して、車長を長くしてあるのみならず、車幅も拡張してあるからです。しかもフロントグリルのスリットが7から10に増やしてあるというオマケ付きです。
そしてケイ車と同じく低車高化、インチアップがはかられ、ミニ四駆用のタイヤおよびホイールに換装されています。内装は乗用車風にアレンジしてありますが、その工作内容が細かいです。シートは換装、ドア内張りを追加、センターコンソールやニトロを追加、そして後席にはウーファーおよびモニターが追加されていますが、モニターにはちゃんとアニメOPのビーチのシャーマンのシーンが出ています。
そしてリアカウルはグラスハッチ化がなされ、荷室にはなんとドリンクディスペンサーとポップコーンマシンが設置されています。アウトドアを楽しむには最適のクルマになっており、これでゆるキャンしたくなってしまいます。
そしてこちらが、タミヤのハンヴィーのノーマル仕上げの作品です。これと比較すれば、前述のナオミハンヴィーカスタムの素晴らしい改造ぶりがよく理解出来ると思います。
こちらは超重戦車T-28です。アニメの劇場版で大学選抜チームが使用しましたが、Nさんのガルパン世界観においてはサンダースチームの車輌となっています。お話によれば、「大学選抜戦後に、カールの運用許可に関する議事録閲覧を請求したサンダースに対し、文科省が一方的にT-28を送りつけてきた」という、凝った設定であるそうです。
あくまでもカールの運用許可に関する経緯を伏せておきたい役人の思惑はいかに、という展開まで楽しんで下さいよ、ということなのでしょうが、一つの作品にここまでのストーリーを盛り込むところが粋です。
こちらは題して「アヒルさんチーム休憩中」、練習後のワンシーンをNさんなりの発想で自在に構成してありますが、ここでは戦車は既に脇役です。上図には写っていませんが、道路わきの斜面下に停めてある八九式中戦車甲型は、ファインモールドのキットを使用して履帯はモデルカステンの連結可動品に交換、砲身も金属パーツに替えてあります。
しかし、それ以上にこだわったのが、上図のハイラックスサーフです。元キットはモンモデルの1/35スケールのヴェロキラプターシリーズのNo.VS-002ですが、これもガンガン改造しまくりです。低車高化、インチアップは当然ながらド定番です。ミニ四駆用のタイヤおよびホイールに換装されています。
Nさんはもしかしてミニ四駆愛好者だったのでは・・・?そしてコミック「爆走兄弟レッツ&ゴー!! 」の大ファンだったのでは・・・?というような浅見光彦的迷推理はさておき、フロント、サイド、リアにエアロバーツ、ブリスターフェンダーをエポキシ造形によって追加してあります。その造形美には浅見光彦のソアラ・リミテッドもかないません。
さらにリアタイヤハウスを角型に仕上げてOVMを装着、荷室には磯辺キャプテン以下の四人の荷物を配置してあります。マディソンバッグ、弁当箱、ディパック、トートバッグ・・・、とにかく細かく作り込んであります。車内の内装色は、よく見ますとバレー部のジャージと同じカラーです。さらに凄いのが自作のデカールで、特にボンネットのファイヤーバードの頭と足が、なんとアヒルさんマークに変えてあるという、マカロニほうれん荘ばりのギャグになっています。いやー、素晴らしいです。
これはAFVクラブのT34/85インテリア付き初回限定版クリアボディキットですね。私も同じキットを組んでプラウダ高校チームの車輌を作りましたが、Nさんは継続高校チーム仕様に仕上げています。砲塔を回すと内蔵の電子レコーダーが作動してカンテレの音がポロロローーンと響く・・・、というのではなく、内装色が梅原屋ガルパン商品のひとつ「継続高校メッシュキャップ」と同色でなされています。販促なのでしょうが、反則ですね。
さらにショックアブソーバは上図では写っておらず、実物をよく見ないと分かりにくいてすが、ビルシュタイン仕様で塗装およびマーキングされています。デカールはもちろん自作です。笑えるポイントは車内にムーミンの落書きが仕込んであること、そして誰が使うのか、車外にスキーセットが装着されています。設定ストーリーは細かく聞いていませんが、Nさんならば、「風に流れてきたのさ・・・」とまとめることでしょう。
上図は、ちょっとピントが合っていませんが、カメさんチームの初期の搭乗車である38(t)戦車です。形状およびフルインテリアの仕様から、使用キットはプラッツ発の公式キットではなく、ホビーボスのB型のインテリア付きキットであると分かります。
考えてみれば、凝って凝って改造にもこだわりまくるNさんが安直に公式キットなんて使う筈がないのですね。素人には及ばない発想と想像力とで、ストーリー盛りだくさんのドラマチックなジオラマに仕上げてくれるのが定番なんですから・・・、と思いきや、予想に反してこれは手堅く地味にストレート組み、ノーマル塗装仕上げです。履帯をモデルカステンの連結可動品に交換し、河嶋桃の席を追加したぐらいですが、それだと劇中車の範疇にとどまるので、ひねりは何もありません。でもこの地味なところで、なぜか笑いがジワリとこみあげてくる・・・。ドリフスターズで言えば高木ブーのポジションでしょうか・・・。
これは、私は最初はヤークトティーガーかと思ったのですが、よく見ると全然違いました。史実では試作車のみが未完成のままに終わったドイツの超重戦車E100でした。適応キットはトランペッターの製品がよく知られていますが、上図の作品は砲塔がクルップ型なので、使用キットはアミュージングホビーのAMH35A015と分かります。Nさんらしい渋いチョイスです。
設定は「黒森峰女学園の花壇に常設展示されているE100」だそうです。もちろんアニメ劇中依拠ではなく、Nさんの自在な新境地におけるオリジナルガルパンストーリーです。砲塔側面には西住流の教えが書かれ、ちょうど西住しほが長女まほの進路相談で訪れてきている、という場面なのですが、肝心の西住しほフィギュアがどこにも見当たりません。
どこにある?どこへ行ったんだ?・・・おーい、杉野ーー!杉野はいずこー!とNさんが広瀬中佐になりきって探し回ったわけではなく、単に欠損して補修中なのだそうです・・・。 (続く)