今回、一階の左側棚のミニフィギュア群のなかに、Kさんがギターのミニチュアを組み込む予定でした。俗に「ギタコレ」と呼ばれる、メディアファクトリーの「けいおん!Guitar Collection」のBOXセットが物置の非展示品のなかに含まれていたため、これを活用して展示に加えよう、というわけです。
そこで、上図の中央に並ぶ「きゅんキャラわーるどSPけいおん」シリーズの平沢唯、秋山澪、中野梓の横を少し空けて、それぞれのギター、ベースを入れることになりました。
映画版でおなじみの「蘭鋳寿司」の法被をまとったHTTの5人、そして後からロンドンにやってきた顧問の山中さわ子のセットです。バンプレストのきゅんキャラシリーズのなかで、最もアニメ劇中に近い造形であると高く評価されたそうです。
フィギュアにおいては、アニメキャラクターの雰囲気にいかに近づけるか、が常に命題として造形者に課せられますので、その造形表現が常に進化と向上を求められるのは当然ですが、その頂点というのはなかなか見極めにくいものです。
日本美術史における立体造形の歴史は、古代から主に仏像および神像の彫刻が形作ってきましたが、それぞれの頂点というのも、時代によって様々です。フィギュアも立体造形品でありますから、似たような概念で捉えてもよさそうに思いますが、頂点の定義がやや異なるように思います。
ミニフィギュアというのは、アニメ作品への愛情度または没入度によって出来が左右されますので、その頂点というのは、アニメへの思い入れの度合いの高さ、という基準にて括るのが良さそうに思えます。
例えば、バンプレストのきゅんキャラシリーズの最初の製品がこちらの5体ですが、あまりアニメキャラクターに似ていません。見ようによっては何となく似てる、という程度ですが、しかしファンの大多数は大喜びでこれらを買い求めました。
けいおんキャラクターの最初のミニチュア立体化のシリーズでしたから、当時は似てる似てないは問題ではありませんでした。安く買えるけいおんのミニフィギュアが登場した、素晴らしい、欲しい、という気持ちが全国的に広がって、膨大な数のセットが売れたそうです。きゅんキャラシリーズの各セットの中で最も販売数が多かったらしいのですが、それもまた「頂点」という概念で評価してもよいのだろう、と思います。
このように、ミニフィギュアのセットのそれぞれに、歴史なり背景なりが秘められます。このたびの陳列によって一定の資料的価値が加わった現在、「語られるべき事柄」というものが、より求められてゆくのではないかと予想します。そのニーズにいかにして応えるか、が今後の課題の一つでしょう。
さて、今回の作業にて、Kさんと相談したことの一つが、上図のフィグマ群の背後に並ぶアオシマのモビップシリーズをこのままにしておくかどうか、という点でした。フィグマと同じように箱から出して並べる、という選択肢もありましたが、スペース的に難があるので、他へ移そうということになりました。
それで、きゅんキャラシリーズの陳列の後ろのスペースに入れられないか、ということで寸法を測りましたが、無理でした。もともと棚内空間がそんなに深くないのです。
以前の作業時に棚本体をKさんと検分した際、もとは奥行きがある扉付きの棚であったのを、図書館にて書架として再利用する際に、棚の中央に仕切り板を入れて空間を等分し、両面書架に改造した痕跡があることが判明しました。そして、その後に奥板を再びはめて半分の空間を密閉していることも分かりました。
この改造は、一階のけいおんコーナーにある全ての棚に施されているので、現時点では展示空間は棚本来の空間の半分しか無く、展示キャパシティも半分しか無いわけです。
それで、今後の作業で棚の仕切り板を外して元通りの広い棚内空間に戻せるかどうかを検証しました。理論的には可能ですが、棚そのものは役場の備品なので、許可があったとしても手を加えての現状変更は難しいだろう、という見解に落ち着きました。
さて、問題のアオシマのモビップシリーズですが、下段へ移せるか、というとそれも無理でした。
なにしろ、下段にはねんどろいどの学園祭ステージセットが一杯に空間を占めています。
その隣のきゅんキャラ学園祭ステージセットも同様でした。ステージがいずれも奥行きがあるので、棚内スペースをギリギリまで占めています。
どうしようか、とお互いに考えた末、Kさんが一つの提案を出してきました。物置に積まれている、上図の展示品のパッケージのうち、フィグマとねんどろいどの分は、パッケージ内に予備パーツやオプションパーツが入ったままであるため、その保管とパッケージの維持を兼ねて、棚の内外に並べてディスプレイしよう、という案でした。
それは良いですね、とすぐに賛成しました。物置の荷物もかなり片付くので、一石二鳥です。アオシマのモビップシリーズは、棚下段の他アニメグッズ展示を半分に縮小して得られるスペースへ入れよう、と決まりました。
かくして、棚上にねんどろいどのパッケージがずらりと並びました。なかなか見栄えもするなあ、と感心しました。
棚内のモビップの箱が並んでいた位置には、フィグマ群のパッケージが戻ってきました。フィグマ群の背景展示としてこれ以上のものはありません。似たような展示は玩具店や模型店でも採られているなあ、と思い出しました。パッケージの再活用、ということの一つの好例になる、と感じました。
こうなると、他のパッケージも活用出来ないかな、ということで物置に行って色々チェックしましたが、こちらは全て寄託提供品の箱であるので、むやみに出すよりは大事に保管したほうが良い、ということでまとまりました。寄託期限満了後に、再び箱詰めして所有者に返却するまで、これらの箱は段ボール箱におさめて物置に仕舞われることになります。 (続く)