
上図は、劇場版のエキシビジョンマッチにおける終盤の追撃戦のシーンです。聖グロリアーナ女学院のフラッグ車のチャーチルを、大洗女子学園チームの5輌が追いかけています。カメさんチームが河嶋桃の操作で一射をお見舞いしますが、いつものように弾は大きくそれて前方右手の海面に着水して白い飛沫を上げました。
このシーンに関して、20数年来の友人である鳥取県のK氏が「これの場所って、鳥取県だよな?」とメールを寄越してきました。私の勧めで最近にガルパンのDVDをレンタルで視聴し、その感想を画像ごとに述べてきたのでした。
その指摘に、私は「ああ、やっぱりなあ」と膝を打ちました。同じ感想をずっと抱いてきたからです。でも、そんなはずは無いのです。前後のシーンから考えて、問題のシーンは間違いなく大洗海岸での追撃場面であることが明らかです。
しかし、地形の描写がかなり実際のそれと異なります。戦車が小さく見えるほどに幅のある砂浜がずっと続きますが、実際の大洗海岸の砂浜はもっと狭いです。岩礁も多く起伏に富んでいます。さらに、左上隅に見える海岸沿いの道路が四車線にて描かれますが、実際の大洗海岸通りは二車線です。
要するに、上掲のシーンに限って言えば、実際の大洗の地形状況が全く反映されていないのです。
しかし、K氏の指摘通り、上掲シーンの地形にそっくりな場所が鳥取県にあります。米子市の弓ヶ浜であり、地形的には「井上靖アジア博物館」付近の状況がほぼ一致します。海岸沿いの「産業道路」と呼ばれる国道431号線も四車線なので同じです。砂浜の幅も、劇中シーンと同じぐらいあります。端的に言えば、全てがピッタリと言っていいほどに一致するのです。
さらに笑えるのが、「井上靖アジア博物館」の正門の雰囲気が、五十鈴邸の門に良く似ていることです。
以上の諸点をふまえると、ガルパンの舞台設定が最初の案においては山陰の鳥取、島根あたりでイメージされていた、という事実が興味深く思われます。第7話に出てきた、冷泉久子が入院した病院のモデルが松江市の赤十字病院であること等は、そうした初期案の名残であったかもしれません。
なので、K氏の指摘通りに上掲シーンのモデルを弓ヶ浜と推定するのも、楽しいことです。最近にバンダイの杉山潔プロデューサーが述べられた「アニメにはまちおこしの力なんてない」という記事にも、最初の候補地として山陰が挙げられ、「山がすぐそこに迫っていて、海に落ちている。しかも豪雪地帯」と表現されています。
山陰とは、一般的には鳥取と島根の二県の範囲をさしますが、島根県は豪雪地帯ではありませんので、残る鳥取県が杉山氏の表現に該当します。鳥取県は因幡と伯耆とから成りますが、豪雪地帯であるのは伯耆の西側つまり西伯郡一帯です。
そのなかで、「山がすぐそこに迫っていて、海に落ちている」ようなエリアといえば、日吉津、淀江あたりの範囲が該当します。弓ヶ浜は、その南端が皆生海岸に接して日吉津の海岸線に繋がります。弓ヶ浜の北には境港がありますが、もしガルパンの舞台が初期案通りに山陰になっていれば、学園艦の母港は境港になっていたかもしれません。
まあ、全ては推測に過ぎませんが、上掲のシーンのモデルが鳥取県の弓ヶ浜ではないかというK氏の指摘には、同感です。ひょっとして、そのシーンだけが実際にそうだったのかな、と思いたいところですが・・・。