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BC自由学園チームのARL44とは何か

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 今月の模型サークルの定期会合にて、モケジョのエリさんに訊かれました。
「BC自由学園の戦車で、ARL44がありますよね。あれは、ガルパンでは大きな意味を持っている戦車なんでしょうか」

 この種の問いかけはあまり受けた経験が無いので、しばらく返答に窮しました。横でA氏がARL44の概容やスペックなどを説明し始めましたが、エリさんは遠慮がちに手を振って制止しました。
「ごめんなさい。あの、そういうことじゃないんですよ、戦車の性能とかじゃなくってね、ええと、どういえばええんやろう、ガルパンに出てきたことの意味というか、そういう何か、なんですよ」
 それでA氏も沈黙に沈み込みました。難しい事聞くんだねえ、とT氏が笑っていましたが、程なくして腕組みして考え込んでいました。

 そういえば、最終章第1話の公開が始まった時に、エリさん達と視聴に行ったことがあるのですが、そのときもエリさんは、「何でこういう戦車が出てきたんでしょうか」と聞いてきたのでした。その疑問の発端を訊ねたところ、「だって、公式の設定とかに全然出てないじゃないですか・・・」と返されました。
 その記憶がまだ鮮やかなので、今回のエリさんの質問も、意図だけはよく分かりました。

 思うに、エリさんは、公式設定に無かった戦車がいきなり登場することに関して、彼女なりに疑問というか、不審の念を抱いているのでしょう。
 ARL44は、スペック的には相当強力な戦車ですが、第二次大戦中にはモックアップのみで間に合わず、量産開始は戦後の1949年からです。そんなのをホイホイ出していたら、他の「間に合わなかった」戦車も幾らでも出せることになってしまうので、キリがなくなるし、第二次大戦中までの戦車に限る、というガルパン設定の内容とも矛盾しがちになる、おかしいんじゃないか、というのがエリさんの思いなのでしょう。

 それは、私にもよく理解出来ます。と言うか、私自身も最終章第1話で初めてARL44を観て驚きまして、こんなの設定にあったかなあ、と疑問に思いました。それで資料を読み返して、どこにもARL44の名前が無いのを確かめて、「何でこういうのを出してきたんだろう」と思ったものです。

 ガルパンの公式設定資料類のなかで、戦車道各チームの保有戦車に関して細かく言及しているのは、2014年2月から刊行が始まった「月刊戦車道」シリーズが最初です。当時はテレビシリーズの初回放送が終了してまだ半年ぐらい後、アンツィオ戦OVAの製作発表が出たばかりでファンが狂喜していた頃にあたり、「月刊戦車道」は1号目から爆発的に売れて完売が続出したそうです。

 そして、アンツィオ戦OVAの公開直前の2014年6月に刊行された3号に、初めてBC自由学園の公式情報が掲載され、我々は初めてその概要を知ったのでした。もちろん、BC自由学園の保有する戦車についても細かく述べられていましたが、そのなかにARL44の名前はありません。

 ARL44がガルパンに登場する契機は、聞く所によれば、最終章シリーズの製作決定だったそうです。何かのインタビュー記事にて、製作サイド関係者の方が海外の軍事博物館へ行って現存するARL44の実車を取材してきた旨が語られていましたが、それは要するにそれ以前の劇場版の段階まではARL44が公式設定に含まれていなかったことをも示しています。つまり、後から追加した二次の公式設定であるわけです。

 ですが、エリさんが疑問符付きで指摘したように、第二次大戦中にはモックアップのみで間に合わなかった戦車です。そんなのを引っ張り出さないと最終章第1話からのBC自由学園チームの基本構想が成り立たないのか、というのがエリさんの問いかけであったわけです。
 なにしろ、「月刊戦車道」3号に述べられた保有戦車の顔触れもそうそうたるもので、戦力的に大洗女子学園に劣っているどころか、ルノー以下のフランス戦車群に加えてシャーマンやパンターも揃えているという、かなりの陣容でした。無理してARL44を引っ張り出さなくても、現有の戦力だけで十分に大洗に対抗出来るのではないか、出来たらその枠内にて工夫して試合のストーリーも構築して欲しかった、とエリさんは言いたいのでしょう。
 確かにそれは正論かもしれません。しかし、水島監督以下ガルパンの製作サイドは、正論的な流れよりは奇をてらう方向へ進む傾向があります。むしろそれがアニメの製作スタンスとしては普通なのだろうと思います。常にサプライズを仕掛けてファンを喜ばせるという、一種の使命があると思います。だから、際どい手段も駆使せねばならなくなるでしょうし、無理してARL44を登場させるという判断にも行き着くだろうと思います。

 実際、最終章第1話のストーリーは、ARL44の登場によって劇場版とは別の緊迫感に包まれて予断を許さぬ成り行きになったので、仕掛けとしては成功でした。「BC自由学園って、弱いイメージのあるフランス軍ティストだから、大洗は楽に勝てるかも・・・」、というような先入主を吹き飛ばしたため、ファンの大多数は「大洗は大丈夫か?」と手に汗握る流れに吸い込まれたことでしょう。
 なにしろ、ARL44がBC自由学園チーム10輌のうちの半数以上を占めています。火力で言えば大洗を圧倒しています。大洗側にはたった1輌しかないポルシェティーガークラスの戦車が、BC自由学園チーム側には5輌も居るのですから、私もものすごく不安になり、ハラハラしながら第1話を観ていました。

 つまり、ARL44とは、最終章シリーズを面白く見応えあるものに仕上げるための最初の「仕掛け」なのだろうと思います。エリさんには申し訳ないかもしれませんが、ARL44が出なかったら、最終章第1話のストーリーはちょっと精彩に欠けたのではないかと予想します。BC自由学園チームの「手強さ」というのがリアルに演出されにくかっただろうと思います。無理して登場させたとしても、これは正解だったと受け止めています。

 あと、ARL44の登場をもって、これまでのガルパンと現在のガルパンとで確実に変わった概念が二つあると考えています。
 一つ目は、大まかに言えば、第二次大戦中の試作品までであれば、どんな戦車でも出せるという設定が大きく前に出てきたこと、もう一つは、戦車に関する従来の固定的概念というか縛りが無くなったこと、だと思います。

 その流れで、一種の戦車をの一つのチームに固定することなく、複数のチームで使用している、という状況が構成されてきたのでしょう。最終章第2話の予告編に出てきたヴァイキング水産高校チームの戦車に、既存のⅢ号戦車J型とM24チャーフィーが使われているのに驚きましたが、同時に、いずれはそうなるわけなんだ、と感じました。
 なにしろ、ARL44まで引っ張り出したんだから、それぐらい戦車の候補が払底してきたわけだな、既存の戦車の使い回しに落ち着くのも時間の問題だったのだろう、と納得したわけです。そういう、ガルパン戦車の表現手法の転換点に位置するのが、ARL44であるように私には思えます。

 だから、エリさんの問いかけに対しては、今述べた内容をまとめて返すことになります。あまり明確な整理内容ではありませんが、私の拙い解釈と思考法では、これが精一杯です。
 公式サイトでのARL44の紹介記事はこちら

 

 ところで、このARL44、それまでは超マイナーな存在であったのが、ガルパンに登場したことによって、一気に知名度が上がって人気の的にもなりました。そして早くもこの7月には、アミュージングホビーさんより、初のキット製品化がなされて発売が予定されています。

 しかも、近々公式キット化がなされるという噂も出ています。劇場版のセンチュリオンの前例もありますし、たぶん実現するでしょう。というより、公式キット化も視野に入れてのスピーディーな新規開発であるようです。まったく、アニメ効果というものは凄いですね。
 ホビーサーチさんでの製品案内情報はこちら

 


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